


シンガーソングライターのマシネ・アカルイネが8月24日に1st EP「J-popper」をリリースした。
昨年Music Videoが公開された「風になれ」や、既にライブで披露されている「この街のどこかで」「ディクショナリー」を含む全5曲を収録。音源にはもちろん、ジャケットやCDケース、そして価格(5曲入り5円)にもユーモアが溢れ、マシネ・アカルイネのスタートにふさわしい、”らしさ”の詰まった作品に仕上がっている。
今回、CDリリースを記念してマシネ・アカルイネにロングインタビュー。
マシネ・アカルイネとは何者なのか。なぜ”J-pop”というジャンルを選んだのか。「J-popper」の制作を軸に、あまり語られてこなかったマシネ・アカルイネの過去、そして今後の目標や夢について語ってもらった。
——「J-popper」についてじっくりお聞きしたいのですが、まずはCD発売を前にどんな心境ですか。
「やっと聴いてもらえる」「お待たせしました」って感じですね。実はレコーディング自体は1年前に終わっていて。2019年の年末に歌録りをした楽曲もあるんです。この1年で僕はこのEPを何十周も聴きました。何十周聴いてもいい曲と思える自信作なので早く聴いてもらいたいです。
——今作はどういう流れで作り始めましたか。
「1年間で100曲フルコーラスで作る」っていうのを掲げて生きていた1年があって。2年くらい前かな。曲の種だったり、ちょっと作ってこれ違うなっていうのはカウントせず、歌詞ありフルコーラスのデモが完成して1曲とカウント、それを100曲。色んなジャンルやテーマに挑戦して色んな曲ができて。その中から、はじめましての人にわかりすいようなマシネ・アカルイネっぽい5曲を選びました。
——100曲作ろうと思ったきっかけはあるんですか。
僕ラジオが大好きで、ELLEGARDEN 細美武士さんのラジオを毎週聴いているんですけど、細美さんがMONOEYESってバンド始める時、1stアルバム用に127曲作ったって話をされてて。弾き語りとかではなく、ドラム・ベース・ギター入れたデモが127曲。その中から14曲(アルバム12曲、先行シングルのカップリング2曲)選んだと。
また、あいみょんさんが「瞬間的シックスセンス」ってアルバムのプロモーションでラジオ出演されてた時に、280曲世に出てない曲があるって話をされてて。曲の断片ではなく、フルで作ったものが280曲あると。Mrs.GREEN APPLEの大森くんはインタビューで、400曲以上ストックあるって話されてましたし。ただ曲をたくさん作ることがいいこととは思わないですけど、いい曲と巡り逢う為に、たくさん曲作らなきゃと思いまして。
——100曲から選んだ5曲。ジャンルは全て”J-pop”。100曲の中には様々なジャンルがあるとおっしゃっていましたが、なぜ”J-pop”を選んだのですか。また「J-popper」というタイトルに込めた想いも聞かせてください。
僕は小学生の時、J-popで音楽を知り、J-popを聴いて育ってきました。高校に入ってからはロキノンと呼ばれるバンドを好きになったりメロコアしか聴かない時期もあったり。バンドやってた頃もなかなか尖っていて、マイナーコードの暗い歌を歌ったり変拍子の歌を作ってたり。そして今回ソロ初の作品。どんな作品を作ろうって考えたときに、やっぱり原点に戻ってJ-popをやりたいと。J-popって誤解されたり、聴き手や聴き方によっては薄っぺらく聞こえてしまうこともあるんですけど、J-popで勝負したいと。僕の根っこにあるものはJ-popで。そんな想いから「J-popper」というタイトルにしました。
——CDジャケットも面白いですよね。
僕サッカーが大好きで。サッカーに関するものにしたかったんです。この選手交代のアイデアは2年くらい前からありました。マシネ・アカルイネ初のCDということで、これからマシネ・アカルイネが音楽業界というピッチに入るぞと。背番号を「17」にしたのはマンチェスター・シティFCのケヴィン・デ・ブライネが好きだからです。友達の知り合いのデザイナーとカメラマンの方に作っていただきました。本当に素晴らしい仕上がりで大満足のジャケット。心から感謝しています。ちなみに、このジャケット撮影の為にユニフォームも自分でデザインして作りました。フットサルする時に着ています。

1st EP「J-popper」CDジャケット
——リードトラック「この街のどこかで」の歌い出し「毎朝AM6:00起き 僕は乗車率200%の電車に乗り 昨日と同じ街へ」という歌詞が印象的でした。この曲はどのような想いで制作されましたか。
僕は大学卒業後、IT企業で2年間サラリーマンをしていました。大学4年間プログラミングを専攻していてその流れで。毎朝6時に起きてスーツ着て満員電車に乗って、1日働いて満員電車で帰って。その繰り返し。サラリーマンは偉いなぁと。サラリーマンはすごいなぁと。そんなサラリーマン時代のことを歌にしようと思って歌詞を書き始めました。会社を辞めて音楽に専念してからは、同じく音楽を志す方と話すことが増えて。安定と呼ばれている道を外れ夢を追う人。周りから馬鹿にされても冷たい目で見られても自分の信じた道を行く人。みんなかっこいいなぁって。またその頃、同級生が次々と結婚したりして。家庭を持つってすごいなぁ。父親になるってすごいなぁって思って。サラリーマンはすごいってことを歌おうとしてたけど、みんなすごいし、みんなかっこいいって心境に変わって。この街には色んな人がいて、誰もがすごいと。みんな頑張ってるって。サラリーマンだけをやっていても音楽だけをやっていても気づけなかったこと。学生のとき居酒屋の夜勤バイトをして感じたこと。地元を離れ友達とシェアハウスして感じたこと。色んな自分を思い出して書きました。色んな経験をした僕だからこそ書けた歌だと思います。
——音楽的に意識したことはありますか。
歌詞では色んな日常にフォーカスしていたり、パーソナルなこと歌ったあと街全体のことを歌っていたり。その場面展開を音でも表現する為に、たくさん転調させました。1曲の中で8回転調しています。ただ、不自然な転調にならないようにコード進行にこだわりました。これはこれまで何千曲もJ-Popを聴いて覚えたノウハウです。
——この曲はリリースと同時にMusic Videoも公開されました。撮影の秘話などあれば教えてください。
実はこのMV、1年以上前に撮影したんです。確か1回目の緊急事態宣言の前でした。大人数での撮影ができないということで、監督と僕の2人きりで。監督は自分の脇に照明機材を挟んで両手でカメラを持って撮影してたし、僕は道の隅に置いてある自分の荷物とか撮影機材が盗まれないように見張りながらカメラに写ってました。体力的にも精神的にも大変な撮影でしたが、監督から届いた映像が本当に素晴らしくて。映画のような映像にしてくださいってお願いしたら本当に映画のような映像で。僕はこだわるととことん突き詰めたい性格で、「こうしてほしい」「ああしてほしい」って何度も監督に言ってしまって。嫌われてないかなぁ…。でも監督は僕の意図を全部汲んでくれて。素晴らしい作品に仕上がりました。次のMVも、その次のMVも、その次の次のMVも野上監督がいいってくらい大好きな監督、そして大好きなカメラマンです。最近売れっ子になり始めて忙しいと思いますがこれからも撮っていただきたいです。
——看板で気付いたのですが東京駅付近で撮影されていますよね?何か意図があるんですか。
僕が学生時代、夜勤バイトしていた居酒屋が東京駅八重洲口にあるんです。2番Aメロの歌詞に「帰り道に見た朝日がとても綺麗だった 」という歌詞があるんですけど、それは夜勤明けに見た朝日のことで。朝5時に退勤して朝日を見た場所や、夜勤前に自分で作ったデモを聴きながら散歩した道など思い出の八重洲口で撮りたいと思い監督にリクエストしました。また、最後のサビに出てくる「色んな色のした足音が街に響いている 」という歌詞は、サラリーマン時代に乗り換えで使っていた品川駅構内の光景を歌っているんですよ。今はコロナ渦でどうなっているか分かりませんが、混んでるディズニーランドくらい人がたくさんいて。品川駅の構内を歩くとサラリーマン時代を思い出すんですよね。なので品川駅での撮影も監督にお願いしました。振り返ってみると色んな想いが詰まったMVだなぁと。5曲目の「アイワナビー」をリード曲にするか迷いましたが「この街のどこかで」のMVを撮れてよかったです。
——そのリード曲候補となった「アイワナビー」についても聞かせてください。
この曲の歌詞のテーマは高校生の時からあって。英語の授業で「I wanna be ○○」って例文が出てきたときに、I wanna be っていうけど結局何になりたいかわからないよなぁ。I wanna be の先の○○がわからない人もたくさんいるよなぁ。夢がなきゃだめだとか、明確な目標がなきゃだめだとか散々言われるけど、何やりたいか何になりたいか探しながら毎日目の前のこと頑張って、それでたどり着いたものに出会うっていうのも悪くないよなぁと。もちろん夢や目標があることは素敵だし、前へ進むための原動力ではあるんだけど、人それぞれでいいよなと。時期によってそれぞれでいいよなと。そして1つに絞らなくていい、何個あったっていい、何度書き直したっていい。そんな想いと葛藤を歌詞にしてメモしていました。いいメロディができるまでとっておこうと。ずっとあたためていたテーマ。100曲作っていた時にいいメロディができたので、高校生の頃からあたためていた歌詞をそのメロディにくっつけました。高校生のマシネ少年にもこの曲を聴かせてあげたいですね。こんなメロディになったよと。

——高校生のマシネ少年に伝えたいことがもう1つ。マシネさんは学生の頃からAqau Timezの大ファンなんですよね。Aqua Timez全曲カバー(全曲弾き語りカバーして1曲1曲リリース時の出来事やライブでの思い出を語る企画) 全139本の動画をアップするくらい大ファンということで。今作「J-popper」では5曲中3曲、Aqua Timezのベース OKP-STARさんに、そして「風になれ」ではギター 大介さんがコーラスアレンジで参加しています。
宇宙一好きなバンドです。今でも。僕がアップした139本の動画の長さ合計したら21時間12分ありましたから。21時間も語り続けられるバンド他にいませんよ。高校生の時が一番Aqua Timezのライブに行っていたので高校生のマシネ少年信じてくれないでしょうね。というか今でも信じられないです。色んな繋がりがありまして…ドラマみたいな、信じられない奇跡がいくつも重なって楽曲に参加していただくことになりました。夢がひとつ叶いました。
——夢がひとつ叶ったということですが、他にも夢はありますか。大きな夢でも、目先の目標でも。
僕の1番の夢、人生レベルの大きな夢は、金スマ(中居正広の金曜日のスマイルたちへ)のスペシャルに出演することです。金スマのスペシャルって2時間ゲストの人生を再現VTRで振り返るんですよ。この番組大好きでよく見ているんですけど「こんな人生ありえるの?」「こんな奇跡起きるの?」っていうような人生ばかりで。ちなみに2008年に放送された“EXILE奇跡の誕生物語”が神回です。2019年のサンドウィッチマンのお二人の回も最高だったなぁ。音楽家でいうと、国民誰もが知ってるヒット曲を持っていて、かつ色んな奇跡が起こった面白い人生でないと出演できない。名曲を生み出したい、誰にも真似できない面白い人生を歩みたい、という意味でこの夢を掲げて生きています。あとはラジオが好きなので、いつかラジオのパーソナリティもやりたいですね。
目先の目標でいうと、フルアルバムを作りたいです。今回のCDケースの裏は、サッカーのフォーメーションのデザインになっているんです。5曲入りなので今作はフットサルですが。いつか11曲入りのフルアルバムを作って、今回みたいにCDケースの裏でフォーメーションを組みたいです。4-3-3か3-5-2かなぁ。ルカクみたいな1曲目にして、エデルソンみたいな曲でアルバムを締めたいです。

1st EP「J-popper」CDケース裏デザイン
——最後に「J-popper」リスナーにひと言お願いします。
まだ世に出ていない今のうちからマシネ・アカルイネを応援してくれてありがとうございます。自信作ができました。「J-popper」よろしくお願いします!
ライター:遠藤祐都
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